令和4年11月24日(木) 於:ウィズあかし703学習室
講師 山崎古都子氏 S41家住 S43家修住
滋賀大学名誉教授 専攻:住居学、家庭管理学
3年前の「脱住宅短命社会」に続き講師に山崎古都子氏をお迎えしました。
家事労働の性役割分担意識の実態はどのようなものだろうと関心を持って講座に参加しました。参加者は講師を含めて12名でした。
お話の概要を記します。
1 脱住宅短命社会に必要な居住力
建て替えられる(短命な)日本の住宅vs市場化する(継続化する)米国の住宅
日本の住宅の寿命は短く、建て替えは環境負荷を高める。その原因の一つに日本の中古住宅市場が小さく耐用性への関心が低いことがある。耐用性を左右するのが居住力、つまり居住者が住宅の寿命を延ばす努力・技術を持っているかが問われる。
2 居住力を阻む家事労働のジェンダー性
住居の適切な維持・管理は住宅の長寿化と減災、住文化の存続の決め手である。それには掃除→手入れ→点検→修理の習慣を付ける必要がある。日本でも数世代前まで住居管理能力は当然の家事労働であった。にもかかわらず、なぜ現代に至ってその習慣が失われていったのか。家事労働の外部化が進むに従って、住宅の維持管理がプロフェッショナルの仕事として家事労働から切り離していったことが大きな要因と考えられる。その結果、住みこなす技術力も低下してきた。
家事の種類と性役割の意識調査によると(下図)男性・女性回答者とも、住宅の管理責任者は男性にあると回答する割合が高かった。しかし、家事参加の実態を見ると、男性は男の仕事と認識しつつも作業に参加していない。
食物や育児への男性の参加は高まってきているが、住居の管理については管理者が不在の状態にある。循環型社会が求められている今日、住居の循環を必要な業務として、どうやって共同で管理していくかが課題である。
3 未来の家事労働の役割について
家事労働は、自己の生命を司る基本的生活技術であり、それを子どもが目にしながら成長していくことは、生きていくうえでの骨格を作る。家事教育は重要である。かつて家業中心の時代には、子ども達も家業を手伝い、家事労働の分担が家族成員としての義務であった。しかし、産業構造の変化により、家族の中で職業労働と家事労働の分業化が生じ、また、家事労働を外部委託することで生活者の主体性が希薄になってきている。