講師 松本ちづ子氏(S48 理数)2024年7月25日(木)13:30~15:00 ウィズあかし 学習室703
出席者26名(講師を含む)
53歳の時、長年勤めた数学教師の職を辞してJICAのシニアボランティアを受験して合格、マーシャル諸島に赴いて、マーシャル諸島共和国教育省数学科で初代シニアボランティアとして2年間勤務、その後も職員として留まることになり、家庭の事情でやむなく帰国するまでの計14年間、当地の数学教育支援に尽力されました。
2017年6月、14年間を過ごしたマーシャル諸島から日本に帰国した時、カルチャーショックから、まさに浦島太郎のようだと感じました。「浦島太郎子」という題で「支部だより45号」(2021)に一文を書きました。このような語り出しから、マーシャル諸島での数学教育の経験を話してくださいました。
話の流れは、
1.マーシャル諸島共和国紹介 2.教育省算数数学課紹介 3.マーシャルの文化、生活 +α 私の暮らしぶり です。
マーシャル諸島共和国は太平洋中部のミクロネシア地域に位置する島国で約1,200の島と環礁から成り立っています。環礁とはサンゴ礁が環状に発達して中央にラグーン(礁湖)を形成したもので、海洋火山の沈降に伴って形成されます。日本からはグアムかハワイ経由でのフライトがあるそうです。
マーシャル諸島の北部にあるビキニ環礁で米軍が行なった水爆実験から今年で70年目となります(1946~58年に67回の核実験が実施された)。日本では1954年の水爆実験でマグロ漁船の乗組員が被曝したことで知られています。
首都はマジュロ、人口68,000人(2010年)。学校数は公立が小学校79、中学校2、高等学校6校、私立は小24、中0、高14校です。
歴史的には1920~1944年はドイツに代わって日本が占領、第二次大戦後はアメリカの占領下におかれましたが、1986年にアメリカとの自由連合協定締結をもって独立し、マーシャル諸島共和国となりました。
教育省の目標は “No child left behind”, 教育目標は「マーシャルの子供達舘は独立心に富み、環礁における伝統的な文化、価値観を尊重するとともに、西洋文化の技術、知識、価値観を理解し、広い世界的な視野の中で物事を判断できる知識を持つことをめざす」です。
教科書選定のこと、離島でのワークショップのこと、オープンクラス(授業研究)やグループ学習の導入のこと、夏季算数数学研修会、各校の生徒代表者で競う算数の試合(学力テスト)のことなどパワーポイントで現地の写真を示しながら、教育省での活動の様子を説明してくださいました。
「マーシャル時間に悩まされた」というエピソードもありました。、日本でも地域によって〇〇時間というのがあるように、2,3時間人を待たせても平気な風習があります。川の文化である日本に対してマーシャルは海の文化(潮の満ち引きを繰り返す)であることが影響しているのでしょうとのことでした。
最後はウクレレを弾きながら、“Iian emman” というマーシャル語の歌を歌ってくださいました。 包容力のある暖かな歓迎の歌でした。
パンダナス(タコノキ属)の葉で編んだかごやコースター、アクセサリーなどをおみやげに持ってきてくださいました。南の島マーシャルに思いを馳せながら、喜んで頂戴いたしました。
本の紹介もありました。『開かれたかご~マーシャル諸島の浜辺から』、著者は現大統領(元教育大臣)のヒルダ・ハイネ氏の息女(詩人)です。日本語に翻訳されています。みすず書店、2022、池澤夏樹氏推薦。
講師の同窓生の方が多く参加され、久しぶりに大勢の参加者となって、質疑応答問も活発で賑やかな会になりました。